ジュンク堂の本棚
仕事で使う本を見繕いに、ジュンク堂にがん関連の書籍を見に行った。
いつも、がん患者を食い物にする根拠のない食事療法や免疫力アップしてどうこうという言説には、どちらかというと怒りを感じていたが、今日は初めて気づいた視点があった。
がん患者にとって、こういう本にお金を払って読むことが、エンターテイメントになるのかもしれない。
がん患者でなくとも、自然に心惹かれる、「興味が持てること」「面白いと思うこと」がたくさんあるという人は少ない。毎日の料理に腐心することや、青空文庫の古典を読むことが心から楽しめるならばそれはそれで良い…というか、とても幸せなことだ。私の日常に起きているのはむしろ、ちょっとしたことをネットサーフィンして気付いたら何時間も経って、無自覚のうちに欲望や興味が作り変えられていくようなこと、マルチタスクすぎる思考回路のせいで、自分が外発的に更新されるその過程を後から検証することができないこと。自分の内から湧く興味というのが何なのか、もはやわからない。
良い悪いでなく、それが現代のエンターテイメントのそこそこメジャーな形なのだとすると、がん患者にとっての「がんトンデモ本」とは、当事者が興味があることを(この本は私のことを書いている!)、ファンタジーだとしても、扇情的に心を揺さぶるように書いているのだから 面白いにきまっている。
どんな実用書も同じだが、読書の中で内容を実行に移す人は一部なわけなので、暇つぶしの読書としては悪くないのかもしれない。
しかし、すすめない。おそらく読書後にもたらされるものは、参院選の候補者の政策を調べようとしていていつの間にか、誰かのブログで根拠のない陰謀論を何ページも読んでしまった後の無力感と同じものではと思うからだ。そっちに流れてしまいがちだと、そこは強く共感した上で、エンターテイメントと割り切ったって、やはりすすめない。